こんにちは、せしろです。
前々から気になっていたフィラメントを購入してみました。それがこちら。
はい。Thermoplastic polyurethane(熱可塑性ポリウレタン)略して「TPU」です。柔軟性、耐久性、耐衝撃性に優れていて、強い形状記憶があるフレキシブル素材です。
一般的にはiPhoneケースなどに使われている素材です。
iPhoneケースでいうと、シリコン素材やポリカーボネート素材などがありますが、シリコン程ゴムっぽくなく、ポリカーボネート程プラスチック感がない、その中間位の素材です。
結構使いどころがありそうな素材ですので楽しみです。
Amazonの説明欄を見てみると、「ダイレクトエクストルーダの3Dプリンターはほとんど適用で、ボーデンエクストルーダの3Dプリンターが一部適用です。」とありました。
JGAuroraA3はダイレクトエクストルーダ(エクストルーダにフィラメントフィーダがくっついてる)、JGAuroraA3Sはボーデンエクストルーダ(フィラメントフィーダが別)になっています。ここはあえてA3SでTPUフィラメントがきれいにプリントできるか挑戦してみたいと思います。
目次
商品が到着
包装状態は?
商品が到着しました。結構しっかりとしたケースで潰れはありませんでした。きちんと真空包装されていて、乾燥剤もちゃんと入っていました。
推奨温度は?
今回私は黒を購入。ゴム=黒。安直な考えです。推奨ノズル温度は190℃~230℃。ベッド温度は0℃~60℃です。
んっ?0℃?。要はベッドを加熱しなくても大丈夫ってことだろうか?プリントテストで確かめてみます。
どんな素材か手に取って確かめてみる
プリントの前にどんな素材か確かめてみました。
かなり柔らかいです。きちんとフィラメントが送れるか不安になるレベルです。
引っ張ると伸びますが、同じ太さのゴムに比べたら硬く伸びも少ないです。結構力を入れないといけません。
フィラメント送りをしてみる
フィラメントを交換してみます。PLAからTPUに交換です。
TPUをフィラメントローダセットして送るのですが、ここ結構苦労しました。エクストルーダにフィラメントが到着するまでは「FAST」で送ることが出来るのですが、そのままエクストルーダから押し出そうとすると、フィラメントフィーダのドライブギヤで巻き込みを起こします。
素材が柔らかいので、エクストルーダに無理やり押し込もうとしても押し込むことが出来ず、フィラメントのたわみがドライブギヤに巻き込まれてしまうようです。
ということで、エクストルーダに到着するまでは「FAST」で送り、エクストルーダ内にフィラメントが入ったら、「SLOW」でじっくり送ることが必要になります。ノズル温度も少し高めに設定して、フィラメントの流動性を上げてあげることも必要だと思いました。
ということは、プリントの際もゆっくりとエクストルーダにフィラメントを供給しないといけないってことになりますね。
10mmの立方体をプリントしてみる
1回目
1回目のCuraの主な設定は以下のとおりです。
- 印刷温度:200℃
- ビルドプレート温度:60℃
- 印刷スピード:10mm/s
- 冷却ファン:無効
が・・・。
取れない・・・。スティックのり並みに取れん。
ベッドへの食いつきはとてもいいですね・・・。反りもほとんど無いように思います。印刷スピードを極端に遅くしたのが良かったのか、フィラメントフィーダーでの詰まりもなく最後までプリントできたのは良かったです。
で、軽くバリ取りしたんですが、下層が広がっていて、角も少しダレています。恐らくノズル温度もベッドの温度も高すぎたのではないかと思います。
2回目
2回目のCuraの主な設定は以下のとおりです。印刷温度、ビルドプレート温度を下げてみます。
- 印刷温度:190℃
- ビルドプレート温度:40℃
- 印刷スピード:10mm/s
- 冷却ファン:無効
はい。2回目は簡単にプラットフォームから剥がすことが出来ました。
1層目の定着はちょっと弱くなりすぎました・・・。角のダレは写真では分かり辛いですか若干改善されています。ノズル温度を少し下げるか、冷却ファンを回すことでもう少し改善できると思います。しかし急激に冷やすと反りが出る可能性もあるので要注意ですね。
3回目
3回目のCuraの主な設定は以下のとおりです。
1層目のフローを上げることでプラットフォームへの定着をしっかりとさせて、あとはファンで冷やしながらプリント。ファンも2層目から回すと1層目を急激に冷やすことになり、反りが出るかもしれないので、積層0.3mmから回すようにしました。
- 印刷温度:190℃
- ビルドプレート温度:40℃
- 初期レイヤーフロー:110%
- 印刷スピード:10mm/s
- 冷却ファン:有効
- ファン速度:50%
- 初期ファン速度:0%
- 標準ファン高さ:0.3mm
うん。格段に良くなりました。写真では下層に歪みがありますが、実際には気になるような歪みではありません。
寸法もXY方向で-0.2mm、Z方向は±0mmとなりました。
XY方向の-0.2mmは、充填量が不足しているのが原因ですかね?フローを上げるか、印刷スピードを下げるかすればもう少し改善はできると思いますが、フローを上げるとフィラメントフィーダーで詰まりやすくなるし、印刷スピードをさらに下げるとなると時間はかかるしなぁ。
3Dモデルで若干修正するのが無難かもしれませんね。
まぁこのフィラメントの調整の指針が出来ただけども良しとするか。
どんな感じに仕上がったか
柔軟性は?
やはりこのフィラメントの一番の特徴である「柔軟性」を確認します。
ラジオペンチでつぶしてみましたが、
元の形に戻ります。
おおっ。なかなかいい感じじゃないですか。指でも何とかつぶすことが出来ます。
伸縮性は?
輪ゴムを作ってみました。折径約70mmの輪ゴムです。
頑張れば1.5倍くらい伸ばすことが出来ました。
※ノギスをこんな使い方したらダメです。
が、元に戻り切りませんでした。約5mmほど伸びてしまいました。多少伸ばす程度なら元の長さに戻ると思います。
加工性は?
加工性を確認します。ルータで削ってみたところ目の粗いものを使用すれば、容易に削ることが出来ます。プリント後のちょっとした成型は十分に可能だと思います。
次に穴あけ加工です。
まぁ、分かってたことですがこれは無理ですね。狙った穴寸法になりません。穴あけポンチなどで加工するしかないですね。
まとめ
TPUフィラメントを使用するにあたって、一番注意すべき点は「素材が柔らかい」ことですね。
ダイレクトエクストルーダであれば、あまり気にせず使えるかもしれませんが、ボーデンエクストルーダはフィラメントの供給を少しでも無理すると、フィラメントフィーダー内ドライブギヤに噛み込んでしまいます。
時間はかかりますが、フィラメントがゆっくりエクストルーダに供給されるように印刷速度は極端に下げることが望ましいと思いました。今後の課題は印刷速度を如何に上げらるかですね。
素材としては、プラットフォームへの食いつきも良く、反りもほぼ無いのでとても楽にプリントできます。
使いどころも沢山あるので「TPUフィラメント」買ってよかったと思います。